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足立学園高等学校

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スクール特集(足立学園高等学校の特色のある教育 #1)

都内で初となる「探究コース」新設

足立学園高等学校は、2018年度から「探究コース」「文理コース」「総合コース」の3コース制を導入。「探究コース」の中核となる課題解決型授業「探究総合」とは?

2017年度までの「文理科」「普通科」という2つの科を2018年度からは「普通科」に統合し、「普通科」の中に「探究コース」「文理コース」「総合コース」という3コースを導入した。「探究コース」新設と合わせて進められてきた授業改革の要となるのが、「課題探究」と「進路探究」という2つの柱からなる「探究総合」の授業だ。各コースの特色や「探究総合」について、飯山泰介先生、昆野満先生、岩佐隆司先生に話を聞いた。

「探究コース」の中核となる課題解決型授業

新設された「探究コース」は、2年次以降も文系と理系を分けないのが大きな特徴だ。もちろん、受験する大学や学部によって必要となる科目が違ってくるので、文系・理系の科目選択は可能である。しかし「探究コース」の中核となる課題解決型の授業「探究総合」は文系・理系の壁を越えて、思考力や問題解決力、表現力を養う内容となっている。同コースでは、「探究総合」のうち「課題探究」を中心に週2時間実施。答えのない様々な問いに対して、自分なりに道筋を立てて発表する。例えば「エッグドロップ」では、最低限の紙とたこ糸を使い、一定の高さから落としても生卵が割れないようにするためのプロテクターを製作。重力、重さの分散、空気抵抗など、様々なことを考える力が必要となり、答えが1つではない課題に取り組む。

「課題探究」で扱うテーマは多岐にわたる。例えば、次の新紙幣が発行されるときに誰の肖像が相応しいのかという課題にも挑戦。過去に選ばれた人物の共通点を探して、新紙幣の肖像として相応しい人物を班ごとに選ぶ。その結果をまとめて、文化祭でポスターセッションを実施。その過程の中で、歴史だけでなく、肖像権やお金の意義、紙幣のサイズというように、生徒たちの関心は文理の壁を越えて様々な分野に広がっていったという。同コースの準備段階から携わっている昆野先生は「何かを研究するときに文系・理系という壁はない方がよいと考え、このコースは高2以降も文系と理系に分けていません。テーマによっては文系と理系に分けられない分野もありますし、研究していくうちに両方の分野に広がっていくこともあります」と文理を分けない理由を説明。導入後に見えてきた課題もあり、生徒たちの反応を見ながら試行錯誤を続けている。

「教員側の思いと、生徒たちのニーズが一致しない部分も見えてきました。生徒が自分から学びたいという気持ちになれるように、生徒自身が考えた課題に個別対応していけるような環境を整えていきたいです。『探究総合』は大学入試改革を受けての導入ではありますが、難関大学への進学だけが目的ではありません。学んだことが生徒一人ひとりに蓄積され、大学や就職、夢や志につながるなど、何かに活かしてほしいと考えています」(飯山先生)

「探究コース」では、難関国立大学や海外の難関大学を目標としているが、部活動の参加に関する制限などは設けていない。

「部活の種類によって両立できるかどうか変わってきますが、探究コースの生徒には、勉強と部活をうまく両立できる人材になってほしいという思いもあります」(岩佐先生)

「文理コース」と「総合コース」では自分の将来を探究

これまでの「文理科」を継承し、難関大学合格を実現する力を身につける「文理コース」と、スポーツや芸術などの得意な分野を活かして、総合型選抜(AO・自己推薦入試など)も視野に入れた「総合コース」は、2年次から文系と理系に分かれる。高校入学後1年かけて、様々な経験を通して視野を広げ、多種多様な学問や職業があることを知ってから、自分がより深く学びたい分野を選択。

「文理コース」と「総合コース」では、週1時間「進路探究」を中心に「探究総合」の授業が行われる。例えば、自分の進路と向き合うためのサポートとして、東京ビッグサイトで開催される「夢ナビライブ」(高校生が究めたい学問やその学問を学べる大学に出会えるイベント)に参加。事前に「夢ナビプログラム」を活用して、「ゲーム」「宇宙」といった様々なキーワードから自分の関心事を学問や大学の学部などにつなげていく。イベントに参加後は、自分が関心を持ったことを他の生徒と共有。これらの経験を踏まえて、これから何を学んでいくかを「計画書」としてまとめ、並行してeポートフォリオにも記録していく。

「進路探究」の授業では、大学進学の先を見据えて進路を考えるために、同校のOBによる懇談会も開催。1年生は、IT企業、ゼネコン、メーカーなど、文系・理系が偏らないように数人ずつ、社会に出て活躍し始めたOBやすでに活躍して経験を積んでいるOBなどに話を聞く。

「懇談会では、職業や将来について気軽に質問できます。OBにはかなり前から声をかけておきますが、準備なども楽しんでやってくれていて、OBにとってもいい経験になるようです。3年生は、春に卒業したばかりのOBから、勉強方法や受験の成功体験などを聞きます。文系・理系、私立・国公立など、自分が進みたい進路に近い先輩の話を聞くことができるので、よい刺激となっているようです」(岩佐先生)

イギリス語学研修とカナダ特別留学プログラム

全コースの1年生と2年生から希望者を募り、7月~8月の2週間、イギリスで語学研修を行っている。2019年1月からは、1年生の希望者を対象に、カナダ特別留学プログラム(3ヶ月または1ヶ月)をスタート。ホームステイを体験しながら、現地の学校でESL(日本人向けの英語の授業)クラス、歴史や美術などは現地の授業を受ける。研修や留学の目的は、英語力のアップだけでなく、異文化を理解したり多様性を感じて、視野を広げるためでもあるという。

「今年の夏休みに、自主的にシカゴへ行った生徒がいましたが、『現地での会話は、3単現のSなんてメチャクチャだったし、文法もないようなものだった。その程度ならもっと会話に入ればよかったのに、踏み込めなかったのが残念』と話していたのが印象的でした。短期間なので英語が話せるようになって帰ってきたわけではありませんが、コミュニティーに溶け込むためにはどうしたらよいか、どうやって自分を表現したらよいか気づけたのです。この生徒はカナダのプログラムに参加する予定なので、シカゴでできなかったことをカナダでは成し遂げたいと言っています。他の生徒たちも、このような気づきのある体験にしてほしいです」(飯山先生)

中入生と高入生の混合クラスも貴重な経験

「探究コース」と「文理コース」は、2年次から中入生(中学から入学した生徒)と高入生(高校から入学した生徒)が一緒に学ぶ混合クラスとなる。中学3年間で勉強の進み具合に差があるが、1年生のうちに高入生が中入生に追いつけるように授業が進められるので進度の差はなくなる。また、1年次の1年間が、部活動などを通じて中入生と高入生が接する準備期間となるため、2年次で混合クラスになったときにはよい状態で馴染むことができるという。

「中学校から同じ環境で学んでいる中入生と高校入試を経験してきた高入生では、最初は交わりにくい傾向があります。しかし、生徒たちにはおそるべき適応力があり、だんだんと馴染んでくると、お互いがよい刺激となって様々な変化が起き、まさに化学反応のようです。どんな化学反応が起きるかは生徒たちによって違うので、教員たちはワクワクしていますし、生徒たちにとっても留学と同じくらい貴重な経験になると思います」(昆野先生)

同校の男子校としての魅力は、どんなところなのだろうか。

「思春期の男子は、自分の優位性を誇示しようとする傾向があり、いわゆるマウンティングも見られます。しかし段々と『あいつは変わっているけど面白い』とか、『成績は悪いけれど、この分野の知識はすごい』など、それぞれのよいところをちゃんと認めて、お互いを尊重し合えるようになっているのです。女子の存在によって複雑になってしまうことも、男子だけだとシンプルに考えられるのかもしれません」(飯山先生)

共学校なら女子が担当するような役割を男子が担当するなど、性別を超えた役割分担も自然にできてくるという。また、共学校では女子が輝くようなポジションで、男子が輝くこともできる。例えば、共学校の吹奏楽部では女子の人数が多く、男子は重い楽器などを担当しがちなので、花形の楽器を男子が担当できるのも男子校の魅力である。

「高入生の中には、中学校で女子と衝突しがちで男子校を選んだ生徒や、入学当初は女子がいない学校生活に不安を感じていた生徒もいました。しかし、それらの生徒も『男子校は気兼ねなく過ごせるのでよかった』『女子がいなくても問題なく、むしろ楽しく過ごせる』と、男子校の良さを実感しています」(飯山先生)

<取材を終えて>
「課題探究」で扱うテーマは、たいへん興味深いものだった。答えのない問いに対して、自分なりに道筋を立てて発表するという授業は、記述式問題が導入される大学入学共通テストにもつながる内容となっている。しかし、大学に合格するためだけではなく、学びの根幹となって将来へとつながることにも注目していただきたい。

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