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しばうらこうぎょうだいがく

芝浦工業大学附属高等学校

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デジタルパンフレット

スクール特集(芝浦工業大学附属高等学校の特色のある教育 #8)

理工系に特化した施設で躍動! 工技研と鉄研、それぞれの「ものづくり」

芝浦工業大学附属高等学校では、理工系に特化した施設を活用して様々な部活動が行われている。中・高合同で活動している、工作技術研究部と鉄道研究部を取材した。

芝浦工業大学附属高等学校では、理工系に特化した施設が多数完備されており、授業や部活動に活用されている。「ファクトリー」と呼ばれるものづくりスペースを拠点に活動している工作技術研究部の顧問・奥大介先生と、校内にある「しばうら鉄道工学ギャラリー」を活用して鉄道の魅力を発信している鉄道研究部の顧問・小川賢一郎先生、そして各部の生徒に活動内容などを聞いた。

町工場のような工作技術研究部

同校の工作技術研究部(通称:工技研)は、200Vの電源を備えた「ファクトリー」と呼ばれるものづくりスペースで、様々なものづくりを行っている。

「工具は揃っているので、ラジコンやプラモデルなど、生徒たちが作りたいものを作る部活です。やりたいことを自分で持ってきて活動するスタイルなので、やりたいことが見つけられないと辞めてしまう子もいます。逆に、好きなことが見つかった子は、終わりなさいといってもずっと作業をしています。プラモデルから入る子もいますが、プラモデルぐらいならすぐに出来てしまう子が多いです。自分で何かをゼロから作ること、設計図を描くところから始められる子もたくさん入ってきているので、その子たちを伸ばしてあげたいと考えています。お金出せばいくらでもいいものができるかもしれませんが、創意工夫をしたり、材料を安く手に入れたりしながらものづくりを楽しむのが理想的です。例えば廃材を利用したり、自分たちで交渉して自転車屋さんから不用品を提供してもらったりして作る方が勉強にもなりますし、エコですし、SDGsにもつながります」(奥先生)

工技研は、2019年から「Honda エコ マイレッジ チャレンジ」(通称:エコラン)に出場している。エコランは、HONDAスーパーカブのエンジン(50cc)を用いて自動車をつくり、様々な改造を施し、1リットルのガソリンで走行できる距離を競う大会。今年度は、6月3日に行われた「もてぎ大会」に中学生チームと高校生チームが出場した。

「大会では、同じコースを30分走ります。部としては、完走と安全を第1に、事故なく怪我もなく、できれば毎年記録を更新できればいいなと思っています。近年は、かなり記録も伸びてきました。今年応援に行った女子たちも『やりたい!』と言っていたので、来年は女子チームも参加するかもしれません」(奥先生)

エコランへの取り組み以外には、教員からの依頼を受けて本棚を作ったり、教室で使われている備品の修理をしたりしているという。

「英語科の本棚は、中2の生徒たちが作りました。まず、どんな本棚がいいか聞きに行き、自分たちで計画してホームセンターで材料を見て、お金を申請して製作・納品するという、企業のような工程です。納品したものには『工作技術研究部』というシールを貼って、部員が作ったことがわかるようにしています。ものづくりで社会貢献をさせたいと思っているので、自分が作ったものが学校で役に立っていることが感じられたら嬉しいです」(奥先生)

部員の多くは、コツコツとものづくりを楽しむ職人タイプ。校内で仕事を探してマネジメントするCEOの役割を担ってくれる生徒に、ぜひ入部してほしいと奥先生は語る。

「ほとんどが職人タイプなので、経営マネジメントができる子にぜひ入ってきてほしいです。私が仕事をもってくるのではなく、生徒が学校の中で仕事を探したり、リサーチしたりして、下請け企業みたいな部活にできたらいいなと考えています。その方が、生徒たちにとっても勉強になるでしょう。ものづくりを自己満足で終わらせず、将来的には世の中に出て貢献できるように、誰かのために、世の中のために役立っていることを感じてほしいです。友達にも言わずに、家で密かにプラモデルやラジコンを楽しんでいる子もいると思いますが、工技研に来れば胸を張って伸び伸びとものづくりができます」(奥先生)

▶︎工作技術研究部 顧問・奥大介先生

工作技術研究部の生徒にインタビュー

▶︎写真左より:奥先生、Sさん、Uさん

部員数 中高合同 約50人(女子部員 中学生6人)
Uさん 中2
Sさん 高2(高入生)

――高校受験でこの学校を選んだ理由を教えてください。

Sさん 小学生の頃に参加したロボットセミナー全国大会の決勝がこの学校で行われたので、2回来たことがありました。小さい頃からものづくりが好きだったので、この学校の施設や設備ならいろいろなことができると思ったのです。それで、ぜひ入学したかったのですが、小学生の頃は勉強があまり得意でなかったので受験は断念。中学生になってもこの学校に入りたい気持ちがずっとあったので、かなり頑張って高校受験しました。ファクトリーでエコランへの取り組みを見て「これをやりたい! やらなくてはならない!」と思って、迷わず工技研に入りました。

――エコランに参加した感想を教えてください。

Sさん 高校チームは、今まで完走できていたという歴史があったのですが、今回初めてリタイアしてしまいました。準備不足など、いろいろな面で悔やまれるところありますが、たくさんの方から応援を受けて、できる限りのことはできたと思っています。今年の反省を活かして、来年は完走してよりよい順位を出せるようにしたいです。

――今回のエコランでの反省点はどんなところですか?

Sさん 直前になっていろいろ作業をしたので、バタバタして整備不足があったりしました。今回は去年使ったままだったので、来年に向けていろいろなパーツを変えてみて、どこを変えたら記録が変わるかなどの実験をして、データを取って改良していきたいです。

――記録を伸ばすには、どのような点が重要だと思いますか?

Sさん これまでの経験や他チームのデータなどから、タイヤは小さいほうがいいことがわかりました。エンジンをまわしていない時間が長いので、地面との設置面積が小さい方が距離は伸びます。また、間接的ではありますが、ドライバーの乗り心地も結果に影響すると感じました。例えば、溶接がガタガタしていたら乗り心地が悪くなりますし、すごく揺れてしまうと集中できないので、そういった部分も改善していきたいです。

――エコランの準備以外に、普段はどのような活動をしていますか?

Sさん 例えば、教卓の修理です。可動式のスタンディングデスクは支える棒が真ん中に1本あるだけなので、体重がかかるとすぐに壊れてしまいます。何台も壊れたので調べてみると、全部同じ壊れ方をしていたんです。根元にあるパーツが問題だと考えて、そこを改善して修理して、強度チェックをして納品しました。 

――女子の部員から刺激を受けることはありますか? 

Uさん 女子は、道具を丁寧に扱って作業しているなと感じます。男子だけだと、掃除などもこれぐらいでいいかなと思いがちですが、女子は掃除もとてもきれいです。結束バンドを切るときも、僕だとちょっと切り残しがあってもバレないかなと思ったりしますが、女子はきれいに切ってくれるので、見習ってちゃんとやろうと思うようになりました。

Sさん 中1の女子が3人いますが、最初から積極的にやりたいと言ってきてくれたので、いろいろな技術を教えてあげたいと思っています。僕が言ったことをそのままやるのではなく、無駄な作業などがあると「こうした方が速くできますよ」と教えてくれたりもします。僕は、アイデアを考えている段階で、パーツの絵などの立体図を描くのが苦手です。こんなにぐちゃぐちゃで伝わるかなと思いながら女子にお願いすると、とてもきれいに描いてくれるので助かります。

――高校生と中学生が合同で活動するよさを感じるのはどんなときですか?

Uさん 最初に溶接を教えてもらったのが高校生の先輩だったので、僕にとってはエコランへのきっかけを与えてくれた存在です。工技研に入った当初は、何をやるか決めていなかったので、とりあえずラジコンをやっていました。先輩から溶接を教えてもらったことから、面白いな、もっとやりたいなと思うようになったんです。そこから、エコランへの取り組みもやってみようと思いました。

Sさん 自分の持っている知識を中学生に教えるとなると、後輩たちが理解できるようにわかりやすく説明しなければなりません。中学生に教えることは、自分にとっても道具の使い方や基礎的なことを再確認する機会になります。また、僕自身がわからないことがあると、マニアックなことを知っている後輩もいるので、逆に教えてもらうこともあり、よい関係です。

――技術室や実験室なども整っていますが、おすすめの施設はありますか?

Uさん やっぱりこのファクトリーです。僕にとっては、第2の家です。 

Sさん 僕は教室が好きです。縦に大きくて、夜は夜景がきれいです。ホワイトボードにプロジェクターを映して使っているので、表示した画面に直接文字を書くことができます。スライドだけで授業を進めようとすると、あとから書き足すことができませんが、このやり方だと、途中の計算は手書きにしたり、疑問点などを書き足すことができるので便利です。

――将来については、どのように考えていますか?

Sさん 人工臓器や医療機器、手術に使う道具などをつくりたいと思っています。ものづくりが好きでこの部活に入ったので、何かものをつくって、人を助けていく仕事がしたいです。 

模型製作から様々なスキルが身につく鉄道研究部

同校の前身が東京鉄道中学であることから、鉄道とは非常に縁が深い。その縁から西武鉄道が保管するSL・403号機関車の寄贈を受け、2022年11月から同校の敷地内に展示されている。校内の「しばうら鉄道工学ギャラリー」では、日本有数のコレクターから寄贈された様々なコレクションや資料を保管し、一般にも公開。学校見学の際に、このギャラリーに魅力を感じて同校を受験する鉄道ファンも少なくない。

「鉄道研究部(通称:鉄研)では、学校説明会の際にギャラリーやSLの見学会を行ったり、YouTubeで動画を公開するなど、鉄道の魅力をより多くの人に伝えるための活動を行っています。最近は、他の部活動とのコラボも行っていて、例えば吹奏楽部の定期演奏会でジオラマを飾ったりしました。主な活動としては、夏に行われるコンテストに出展するための模型を製作しています。夏には合宿がありますが、現地集合・現地解散です。昨年は出雲市駅に集合で、部員たちが行きたいところを周りました。貸切乗車会では、車掌アナウンス体験をしたり、列車が走る音に耳を澄ますなど、他のお客さんがいない中で存分に楽しんでいます」(小川先生)

鉄研では、主役は生徒であり、上級生が下級生を指導する方針で活動しているという。

「本校の鉄研は、上級生が教員の代わりに動いてくれています。模型などの製作には期限があり、予算や人数も限られています。その中で、いかにやりたいことを実現できるかを考えることが大切です。出展する模型をいつまでに作るか計画を立てることなど、後輩に指導することで高校生も成長できます。無断欠席した子を叱ったり、部活だけでなく勉強もしっかりやるように促したり、言葉遣いやカッターの使い方なども上級生が教えます。そしてそういった指導は、次の代にも自然に受け継がれていくのです。教員はなるべく入らずに、生徒たちがやりたいことができるようにサポートしていきます」(小川先生)

将来については、鉄道会社への就職を希望している生徒が多いように思われるが、希望は多岐にわたっていると小川先生は語る。

「もちろん鉄道会社に就職する子もいますが、電気、情報、建築など、皆さんが考えている以上に幅広い分野で活躍しています。模型製作や計画を立てて物事を進める力、電気系統の知識などは、様々な分野で活かせるスキルです。私もそうですが、趣味として鉄道ファンであり続けながら、いろいろな世界を見て、それぞれの道に進んでいきます」(小川先生)

▶︎鉄道研究部 顧問・小川賢一郎先生

鉄道研究部の生徒にインタビュー

▶︎写真左より:Hさん、Kさん、小川先生

鉄道研究部 部員数 中・高合同で約40人(女子2人)
Kさん 高2(部長)
Hさん 中3

――鉄道ファンの中には「乗り鉄」「撮り鉄」などがありますが、何鉄ですか?

Kさん 私は地方に鉄道で行きたいので、乗り鉄とか旅行鉄です。一昨年に、日帰りで北陸に行きました。日本海を見てみたかったので富山地方鉄道に乗りましたが、景色がとても綺麗でした。車両は中古ですし、線路設備も東京とは違うので、地方鉄道独特の揺れや乗り心地も楽しめてよかったです。今年の合宿でも、北陸に行くことになっています。

Hさん 僕も旅行鉄とか撮り鉄ですが、切符も好きです。切符がなくなりつつあるのは残念ですが、仕方ないことだと思います。まだ地方には残っているので、その場所にいかないと手に入らない駅名だったり、切符の地紋と呼ばれる模様も魅力です。

――日々の活動を教えてください。

Kさん 主な活動は、毎年8月に開催される「国際鉄道模型コンベンション」と「全国高等学校鉄道模型コンテスト」に出展する模型の製作です。2022年度は、「全国高等学校鉄道模型コンテスト」で、3部門すべてで入賞しました。1畳レイアウト部門の受賞作品は、JR篠ノ井線姨捨駅(長野県)、冠着山、千曲川をモチーフとしたモジュールです。日本三大車窓の1つとされている姨捨駅周辺、日本の棚田百選である姨捨の棚田、特徴的な姨捨駅構内の配線を一畳のサイズに凝縮しました。3Dプリンターは使わずに、すべて手作業です。芝浦の鉄研は、モデルとなる都市を隅々まで知り尽くすことが大切だと考えています。ネットで得られる情報だけでなく、現地にいかないとわからないこと必ずあるのです。毎年、合宿で行った場所をモデルとして製作しています。

――先輩から後輩に受け継がれているものはありますか?

Kさん やはり、ネットではわからない質感など、見えないところがあるから現地に行った方がいいこと、制約のある中での模型製作に関するポリシーです。お金をたくさんつぎ込んだり、時間をたくさんかければ、いくらでも凝ることはできますが、模型は提出期限までに仕上げなければなりません。どこをそぎ落として、人が見ても違和感なくきれいに作るかが重要です。そういったことを、芝浦のポリシーとして受け継いできています。

――女子はどのように活動をしていますか?

Hさん 女子は同級生なんですが、鉄道愛に関してはマイルドで、模型製作が目的です。部員は鉄道が好きという人が大半ですが、模型目当てで入部する人もいます。工技研とは違う製作を目的にして、縮尺の世界を楽しんでいます。男子は作業がおおざっぱになりがちですが、彼女たちは丁寧で、こんな方法あるんだという発見もあって面白いです。

――将来については、どのように考えていますか?

Kさん 鉄道が好きで鉄研に入りましたが、高校生になって大学以降の進路を考える中で、建築系の大学に進むと必ず模型を作ることがわかりました。街を隅々まで研究して模型を作ってきたことが将来につながると思うので、都市開発などの分野で関われる建築学部を目指そうと考えています。

――受験生にメッセージをお願いします。

Kさん 鉄研の活動は、鉄道の魅力を伝えることが一番の役目です。鉄道のことをよく知らない人にも、鉄研を通して様々な魅力を伝えます。将来は、鉄道会社に就職したい人ばかりだと思われがちですが、私は模型製作から建築に興味を持ちました。鉄道から多分野に広がるので、趣味の範囲では終わらないことも知ってほしいです。

Hさん 鉄道がメインの活動だと思われがちですが、それだけではありません。合宿では地方の鉄道を堪能しますが、こんな街や景色があるのだと、都市の魅力を味わう機会にもなることを知ってほしいです。

「ものづくり」を楽しむための施設が充実

同校には、「ファクトリー」や「しばうら鉄道工学ギャラリー」のほかにも、ものづくりに関わる施設が充実している。金属や木材などを加工して製作するための「加工技術室」、プログラミングの授業などで使う「ロボット技術室」、様々な実験に対応した「化学実験室」「物理・地学実験室」「生物実験室」などがあり、授業や部活動に活用されている。

<取材を終えて>
工技研も鉄研も、中・高合同で活動している。高校生は中学生に教えることで、自分たちも成長できることがメリットの1つである。どちらの部も、後輩であっても、自分の知らないことを知っている人をリスペクトできており、よい関係が築かれていることが伝わってきた。

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