スクール特集(立川女子高等学校の特色のある教育 #10)

制服を自分好みにアレンジできる! 市販品とのコーディネイトも楽しめる新制服
立川女子高等学校は、2025年に制服をリニューアル。多様性や個性を尊重し、市販品も着用できる新制服について取材した。
立川女子高等学校は、2025年4月に創立100周年を迎えた。記念事業の準備を進める中で、どのような生き方をしても、その人の個性を活かせる素地を作ることが同校の役割だということを再確認。「百花を育てる、立川女子。」というコンセプトの具現化ともいえる制服のリニューアルについて、立石優子先生(生徒指導部主任)と1年生の生徒に話を聞いた。
2025年度の新入生から新制服
新制服のデザインを考える際には、「社会のマナーやルール×自分らしく生きる」「立川女子高校としての統一感×多様性や個性の尊重」という、相反する考えを両立させることを目指したという。
「2025年4月の創立100周年に向けて、記念誌の制作やイベントといった記念事業を教員が分担して進める中で、制服のリニューアルについても新制服委員会で話し合ってきました。リニューアル前の制服は、30年以上前に決めたデザインです。マイナーチェンジはあったものの、時代の変化とともに今の生徒たちにそぐわないところも見えてきました。これからの100年に向けて今の時代に合った新制服を制作するために、制服とはどのようなものか考え直すところから始めました。制服をやめて私服にするという案が出たりもしましたが、やはり統一感という面で制服はあった方がよいということになりました。統一感のある中で、多様性や個性の尊重を実現するために、ジャケットの下に着るもの(トップス)を自由に決められる制服にしたことが一番の特徴です」(立石先生)
教員たちで話し合って決めた「きちんと着ると素敵に見える制服」「スラックスはかっこよくスタイリッシュに」「トップスには市販品も着用可」といった要望を業者に伝え、数社のコンペによってデザインが決まった。業者にとって難しかったのが、トップスに市販品も着る前提での制服を作ることだったそうだ。
「市販品ともコーディネイトできる制服という要望が難しかったようで、企業の方を悩ませてしまったようです。一般的な制服は上から下まですべてのアイテムが決まっているので、体調や気分によって調整することが難しいです。例えば、教室の温度設定を寒いと感じる生徒もいれば、ちょうどよいと感じる生徒もいるでしょう。一斉に衣替えをしなければならないと、まだ肌寒いと感じる日でも夏服を着なければならないかもしれません。アイテムのすべてが決まっていると、そういったときの調整ができません。また、制服は市販品より価格設定が高くなってしまうので、学校指定アイテムを減らすことは家庭の負担を軽減することにもつながります。市販品も着用できるようにしたことで、調整しやすくて個性も出せる制服が実現しました」(立石先生)

▶︎生徒指導部主任 立石優子先生
マナーを学びながら「自分らしさ」を楽しめる制服

新制服は、指定アイテムとしてジャケット、正装ブラウス、ボトムス、ベストが用意されている。式典や指定された日には正装ブラウスを着用するというルールがあるが、それ以外の日のトップスは市販品の着用が可能だ。トップスの色は白・黒・紺・グレーで無地(ワンポイント可)という範囲の中で、襟なしブラウス、Tシャツ、ポロシャツ、タートルネックのニットなどを着ることができる。
「ボトムスは、スカート(夏生地・冬生地)、スラックス(夏生地・冬生地)、キュロット(夏生地)、ジャンパースカート(冬生地)の6種類から選ぶことができます。スカート丈にも好みがあると思うので、3種類の丈を用意しました。一見スカートのように見えるキュロットは、スカートより短めの丈です。膝下丈で可愛く見えるスカートも作りたかったので、ジャンパースカートを取り入れました。3種類の丈それぞれが可愛く見えるデザインですが、どれも同じグレージュのジャケットに合うように作ったので、違うボトムスを着用していても統一感があります。また、新制服の初年度なので、生徒たちが何を着ていいか戸惑わないように市販品の色や形にルールを設けました。これで確定ではなく、個性を表現できる制服のよさを活かして、生徒たちの着こなしを見ながら色や形をもっと自由に選べるようにしていきたいと思っています」(立石先生)
新制服の初年度は、「学校生活にふさわしいもの」を基本とし、装飾品(規制のネクタイやリボンなど)をつけないこと、肩や襟ぐりなどの露出が多いものやフードの付いているものは不可といったルールの中で、生徒たちは自分が着たいものを選んでいる。セーターやベスト、カーディガン、トレーナーも同様に、市販品の着用が可能だ。それぞれの個性も出してほしいが、服装のマナーや社会のルールも学んでほしいと立石先生は語る。
「社会に出たら、自分でTPOを考えて服装を選ばなければなりません。学校に着ていくものを自分で考えることは、服装に関するマナーや社会のルールを学ぶことにもつながっていきます。例えば、本校では1年次に作法の授業がありますが、生徒たちは作法の授業がある日はTシャツなどの襟がないトップスは不可だと教えられています。襟なしと襟付きが与える印象の違いなどを考え、自分で着るものを選びながら場面によってどのような服装がふさわしいか学んでいくことができるのです」(立石先生)
生徒たちの着こなしから教員も学ぶ日々
生徒指導部主任という立場での目線も持つ立石先生は、新制服になってから生徒たちの着こなしに対してこれまでと違う見方をするようになったという。
「制服が上から下まで全部指定だと、そこから逸脱していることに目が行きがちですが、新制服は『こんな着こなし方もあるのか』と気づかされることが多いです。想像していたよりブラウスのフリルが華やかな着こなしがあったり、ニットなどは大人っぽいなと感じたり、生徒たちは私たちが想像していなかった着こなしをしていますが、全体的に落ち着いた雰囲気で過ごしています」(立石先生)
制服を変えるとなると、卒業生などからも様々な意見が出るものだ。姉や母親が同校の卒業生である場合などは、変わってしまうことは残念だという声も聞こえてきた。
「変えるにしても、今の主流となっているデザインがよいという意見もありましたが、個々の好みや体調に合わせられるのは画期的だという意見もいただきました。新制服には、個性を活かして『百花』を育てていこうという教員たちの思いが込められています。多様性の尊重など、世の中がいろいろと変わってきているのに、制服だけはみんなと同じというのはどうなのかという考えもあります。新制服は、これからの100年に向けて本校が変わっていくきっかけになるかもしれません。着こなし方もまだまだ変わっていくと思いますし、マナーやルールを踏まえた上で、創意工夫もでてくるでしょう。立川女子という統一感のある中で、個性や体調を考えながら自分らしく制服を着こなしていってほしいです」(立石先生)
新制服を着用している1年生にインタビュー
Aさん(高1 総合コース)
Tさん(高1 総合コース)
――制服が新しくなることはいつ頃知りましたか?
Tさん 制服が変わることを知ったのは、秋頃に参加した学校説明会です。かなり変わったという印象を受けましたが、自分で自由にコーディネイトが組めるところが他校と違っていて斬新だと思いました。
Aさん 9月に参加した、他校との合同説明会で知りました。中学校の制服は個人の体調や適温に合わせて調整することができなかったので、私にとってはよい知らせだったと思います。中学校では暑がりの人が多かったので、夏は冷房の温度が低めに設定されていたのですが、私には寒すぎて授業中に具合が悪くなることも多かったです。新制服は、衣替えがないため、自分の体調に合わせて自分に合った服が着られるのはいいなと思いました。

▶︎Tさん
――入学してから約半年経ちましたが、実際に着てみてどうですか?
Aさん 自分でトップスを決められたり、ボウタイブラウスも初めてだったので新しい制服を着られることにワクワクしました。今のところ、ボウタイがうまく結べないことがある以外は快適です。スカートを履くと体が冷えやすいので、スラックスと夏用のキュロットを買いました。キュロットは試着のときからいいなと思っていましたが、ウエスト部分のゴムやボタンが着脱しやすい設計になっています。体育の授業がある日なども、着替えやすいので便利です。
Tさん 最初はジャケットのトップスをどのブラウスにしようか悩みましたが、何パターンか着ていくうちに自分はどんな組み合わせが好きかわかってきて、ベースのスタイルができてきました。私はリボン系が好きなので、正装ブラウスよりもっと大きくて、ふわふわなボウタイがついたブラウスを着たりしています。ボトムスは、スカートとジャンパースカートを買いました。同じクラスにも「可愛いから大好き!」と言って、ジャンパースカートを気に入って着ている人がいます。

▶︎Aさん
――周りからはどのような感想がありましたか?
Tさん 以前の制服を着ている先輩方からは、ベストやカーディガンが自由なのはいいなと言われます。姉がこの学校の卒業生なのですが、自分でコーディネイトが組めるのはいいねと言っていました。
Aさん この制服を着ているのを初めて見た人からは、「宝塚っぽい」とか「銀行員みたい」と言われたこともあり(笑)、一般的な制服のイメージとはかなり違う印象なのだと感じました。同じ中学校だった友達からは、「他校と違うところが多くて羨ましい」と言われることもあります。例えば、セーラー服だと気温に合わせて調整しにくいので、衣替え前の時期は冬服だと暑いと言っていました。ジャンパースカートも、他校ではあまり見かけないのでいいなと思います。

――今はトップスの色や形にいくつかルールがありますが、今後ルールが変わったらどんな着方をしてみたいですか?
Tさん 今は白・黒・紺・グレーという決まりがありますが、ベストやカーディガンの色 を暖色系の明るい色にできたら、コーディネイトの雰囲気も変わるかなと思います。ベースが紺でも白のラインが入ったものなども着られると、選択肢が増えて楽しくなりそうです。
Aさん 今のルールではフード付はダメなのですが、パーカー系も着られるようになったらいいなと思います。ジャケットの下に薄めのパーカーを着ていれば、急に雨が降ってきたときでも小雨ならフードをかぶれば傘の代わりにもなって便利です。

――TGSA*の活動中に、受験生や保護者と制服についてどんな話をしますか?
Aさん ボトムスが4パターンもあることに驚く人が多いです。トップスとして着る市販品は、どんなものを選べばいいかという質問もあります。夏の間、私はサマーニットを着ていたので、このようなものでもよいと説明したり、横を通った1年生の着こなしを紹介したりしました。
Tさん ベストのマークやスカートにピンク色が使われているのを見て、可愛いと言っている人もいました。細かいところですが、ピンクが入っているのは可愛いポイントなので私からも伝えたりしています。
*「TGSA (Tachikawa Girls' Student Assistant)」は、学校説明会に参加した中学生や保護者の案内などを担当する課外活動。

<取材を終えて>
下校中の生徒たちの着こなしも見ることができたが、本当にそれぞれが好きなインナーを着て個性が表われていた。以前の制服も人気があったので、変わってしまって残念がっている人もいるかもしれないが、思っていた以上に自由度が高い。様々な着こなしが楽しめるので、ぜひ学校説明会などで生徒たちがどのように着こなしているか見ていただきたい。
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